数物系
物質(物理)系
工学研究科
2021年

11.極限の薄さの物質:原子1層のシートを作って測ろう

受講場所
対面
担当研究科
工学研究科
担当者
小林慶裕、井ノ上泰輝
最大受講人数
1人
【概要】

2010年ノーベル物理学賞の対象となったグラフェンは、炭素原子が六角形状に連なった原子1個分の厚みのシート状の2次元物質です。2次元物質は日常的に接する3次元の物質とは異なった性質をもっています。電気特性(パソコンの半導体よりも高性能)や機械強度(鉄よりも壊れにくく、柔軟)に優れるだけでなく、電子の質量がなくなるなど奇妙な振る舞いをします。本課題ではグラフェンなどの2次元物質を自らの手で作製し、その特異な物性を探索します。

具体的な内容は受講生の興味に応じて設定しますが、いくつかの例を以下に示します。

例1:グラフェンを作って電気特性を測ろう セロハンテープを用いることで、グラファイト(黒鉛)のかたまりから原子1層のグラフェンを引きはがすことができます。また、グラフェンを置く基板を工夫することで、通常の光学顕微鏡でも原子1層のグラフェンを見つけることができます。この方法で作ったグラフェンに微細加工技術により電極を取り付けて、電気伝導などの特性を測定します。また、窒素原子とホウ素原子でできた窒化ホウ素シートはグラフェンと似た構造の2次元物質ですが、絶縁性を持ちます。グラフェンと窒化ホウ素シートを重ねて、グラフェンの電気特性がどのように変わるかを調べます。

例2:2次元物質であるグラフェンを積み重ねてみよう 複数のグラフェンを重ねると、層同士はお互いに弱く結合します。さらに、高温で処理したり、圧力をかけると、層間の結合が強くなり、3次元物質のグラファイトに変化します。本課題では、グラフェンの積み重なり方によって光学的・電気的な特性がどのように変化するかを調べ、2次元物質と3次元物質の違いを考えます。

例3:グラフェンスポンジセンサーを作ろう グラフェンを加工してスポンジのような多孔質の材料にすることができます。その表面積の広さや柔軟性を利用したデバイスを作製し、触覚やにおいなど、様々なセンサー応用の可能性を探ります。

【備考】

受講生と担当教員(2名)とで相談の上、テーマ設定を行います。 物質(物理)系の体感科学研究を受講した者はもちろん、未受講者でも物質やナノ材料に強い興味があれば大丈夫です。 上記の課題は例です。興味に応じてアレンジします。 グラフェンやカーボンナノチューブなどナノ物質に関する具体的な研究提案も大いに歓迎します。